季節は春だろうか? こんな憂鬱の中で彼はとても つまらないとふくれている。 「もう暦もない 記憶もない 私は燕のように巣立ちをし、 そうしてふしぎな風景のはてを翔けてゆこう」 とまた旅へ出掛ける。 彼は愛する猫の思い出だけがいまは情熱的に 心の中を燃やしている。 その灯火を入れて彼はまた旅に出る。 “道先案内人の猫”の図 怠惰の暦 いくつかの季節はすぎ もう憂鬱の櫻も白つぽく腐れてしまつた。 馬車はごろごろと遠くをはしり 海も 田舍も ひつそりとした空氣の中に眠つてゐる。 なんといふ怠惰な日だらう 運命はあとからあとからとかげつてゆき さびしい病鬱は柳の葉かげにけむつてゐる。 もう暦もない 記憶もない わたしは燕のやうに巣立ちをし さうしてふしぎな風景のはてを翔つてゆかう。 むかしの人よ 愛する猫よ わたしはひとつの歌を知つてる さうして遠い海草の焚けてる空から 爛れるやうな接吻を投げよう。 ああ このかなしい情熱の外 どんな言葉も知りはしない。 #
by autre_moi5
| 2008-05-12 18:41
| 青猫
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